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本願寺准連枝 機法院殿(大谷真実様)「連載 自灯明法灯明(第7回)(更新日 2018/02/01)

 よく口論している人を見かけますが、正直申しますと大体がどうでもいい内容だったりします。

 例えば、口論の定番である「言った」「言ってない」です。「私は行かないと言った」「いや、行くと言ったから予約したんだ」というような内容。よくある話です。

 でも、ちゃんと相手の話を聞くと、意外と自分の勘違いだったり、間違えて解釈していたということが多々あります。人はついつい思い込みで行動してしまいがちですが、その思い込みで相手を非難していることがあるということに気づき、改心したいものです。

 前回七高僧の龍樹菩薩についてご紹介させていただきましたが、今回は、天親菩薩についてお話させていただきます。

 天親菩薩はパキスタン生まれで20歳のころに仏門に入られます。上座部仏教を学んでいた天親菩薩は、対抗勢力である大乗仏教を非難していました。天親菩薩の兄である無著(むじゃく)は、そんな弟に心を痛め、大病になったと天親菩薩を呼びつけます。そして、天親菩薩は、無著の説く大乗仏教に耳を傾け、自分が間違っていたことに気づき、大乗仏教へ転向します。

 今まで大乗仏教を非難していた自分を恥じた天親菩薩は、舌を噛み切って自殺しようとしますが、「罪を償うなら、大乗仏教を勉強して、多くの人に教えを説きなさい」と兄に諭され、大乗仏教の布教に専念されるのでした。天親菩薩は「千部の論師」と言われていますが、代表的な書物として「浄土論」があります。

 《正信偈》では天親菩薩について書かれていますが、
その中から

 広由本願力回向(こうゆうほんがんりきえこう)
 為度群生彰一心(いどぐんじょうしょういっしん)

という二句を紹介させていただきます。

本山本堂 七高僧御影像
【天親菩薩】

 これは、『(天親菩薩が、)私たちを本願に目覚めさせる為に、阿弥陀仏からいただいた本願に基づいて信心の意味を明らかにしてくださった。』という意味です。

 ここでいう【一心】とは、『信心』のことですが、阿弥陀仏の本願には、「至心」「信楽」「欲生」の三心を誓われています。では、三心とはなんでしょう。

 「至心」は、阿弥陀仏の真実の心、「信楽」は、衆生(私たち)の心であり、阿弥陀仏を信じる喜び、信心を表しています。「欲生」は、衆生がお浄土に生まれたいと欲する心のことです。「至心」「心楽」「欲生」をまとめると、阿弥陀仏の私たちを救いたいという真実の心に気づき、阿弥陀仏を信じて、お浄土に生まれたいと願う『信心』を意味していることがわかります。

 親鸞聖人は、天親菩薩は私たちをお浄土へ導くために「一心」すなわち「信心」を明らかにして下さったと詠われたのです。